研究

私の今までの研究は、主に日本史上の「境界」および「周辺」地域を対象にしてきた。そうしたことに興味があるのは、日本に在住している外国人として、常に国境を越えて日本社会を見ており、「境界」を身近なものとして感じるからだろうと思う。最初は、以前住んだ福岡県の歴史(大宰府や鴻臚館など)を中心とした研究をしていたが、そのあと、「『境界』とは何か?」という観点から、より広い観点から日本史(および世界史)を考えるようになった。

ところで「境界」というテーマに偏りすぎたせいか、飽きてしまい、今は人間社会と自然環境との関わりを取り扱う「環境史」について研究中。20154月に、オハイオ州立大学のフィリップ・ブラウン教授と一緒に編集した論文集、Environment and Society in the Japanese Islandsがオレゴン州立大学出版局から刊行された。現在、同じブラウン教授と名古屋大学の中塚武教授と一緒に、2013年度〜2018年度に京都の総合地球環境学研究所で行われたプロジェクト、「高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索」の研究成果をまとめた論文集(英文)を編集中。

2017年に、TIME誌のオリビア B. ワクスマン記者が、同誌のオンライン版(321日付け)および紙版(43日付け)に出た興味深い記事に、私の話を引用してくれた。記事は、日本史における「桜」の存在および役割に関するもので、特に古い時代の文献史料から確認できる桜満開時期の推移が示す気候変動にスポットを当てた。取材してくれたワクスマン氏に感謝!

著書

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主な論文

  • 「律令制下における新羅・渤海使の接待法」『九州史学』83号(1985年)、122頁。
  • 「古代の大宰府と新羅使」『都府楼』創刊号(1986年)、79頁。
  • “Foreign Crisis and Domestic Reform: The Emergence of the Ritsuryo State.” Monumenta Nipponica 41, no. 2 (1986): 199–219.
  • “State and Frontier in Early Japan: The Imperial Court and Northern Kyushu, 645–1185.” Ph.D. dissertation, Stanford University, 1989.
  • “Documentary Evidence for Institutional Change at the Dazaifu, 1000–1185.” 『国際文化研究』(桜美林大学)11号(1990年)、2360頁。
  • 「鴻臚館は『国際都市福岡』のシンボルとしてふさわしいのか」『都府楼』10号(1990年)、1719頁。
  • 「古代日本の国境と大宰府」地方史研究協議会編『異国と九州 歴史における国際交流と地域形成』(雄山閣、1992年)、5173頁。
  • 「大宰府はどうして設置されたか」『新視点 日本の歴史』第三巻「古代編 II 奈良・平安時代」(新人物往来社、1993年)、6473頁。
  • “Provincial Administration in Early Japan: From Ritsuryo kokka to Ocho kokka.” Harvard Journal of Asiatic Studies 53, no. 1 (1993): 103–134.
  • 「大宰府の国境機能 八世紀を中心として」『古代王権と交流』第八巻「西海道と南島の生活・文化」(名著出版、1995年)、381419頁。
  • 「境界からの日本史」『現代思想』249号(1996年)、236252頁。
  • 「『境界』とは何か」村井章介ほか編『境界の日本史』(山川出版社、1997年)、162177頁。
  • “Frontiers and Boundaries of Premodern Japan.” Journal of Historical Geography 25, no. 2 (1999): 166–182.
  • 「境界を越える歴史学 グローバル化と学際化をめぐって」『歴史科学』176号(2004年)、3948頁。
  • “Cross-border Traffic on the Kyushu Coast, 794–1086.” In Heian Japan, Centers and Peripheries, edited by Mikael Adolphson, et al., 357–383. Honolulu: University of Hawai‘i Press, 2007.
  • 「大宰府・筑紫館(鴻臚館)の成立とその歴史的意義」古代の博多展実行委員会編『古代の博多 鴻臚官とその時代(鴻臚館跡発掘20周年記念特別展)』(福岡市博物館、2007年)、132135頁。
  • 「国境・境界と文化形成」鈴木靖民編『古代日本の異文化交流』(勉誠出版、2008年)、185190頁。
  • Climate Change in Japanese History and Prehistory.” Occasional Papers in Japanese Studies No. 2009–01. Cambridge, Mass.: Edwin O. Reischauer Institute of Japanese Studies, Harvard University, 2009.
  • “An Open and Shut Case? Some Thoughts on Late Heian Foreign Trade.” In Currents in Medieval Japanese History: Essays in Honor of Jeffrey P. Mass, edited by Gordon M. Berger, et al., 303–332. Los Angeles: Figueroa Press, 2009.
  • “Hakata and Dazaifu: Crossroads, Boundaries, and Identity Formation in Ancient Kyushu.” In Hakata: The Cultural Worlds of Northern Kyushu, edited by Andrew Cobbing, 13–23. Leiden: Brill, 2013.
  • 「対馬はなぜ日本なのか」佐伯弘次編『中世の対馬 ヒト・モノ・文化の描き出す日朝交流史』(アジア遊学 177(勉誠出版、2014年)、716頁。
  • “Climate and Environment in History.” In The Routledge Handbook of Premodern Japanese History, edited by Karl F. Friday, 23–37. New York: Routledge, 2017.
  • A ‘Thankless Task’? My Work as a Book Review Editor.” Journal of Scholarly Publishing 53 (2022): 63–74.